藤川さき『SCRATCH, AND KNOW』

 

藤川さき『SCRATCH, AND KNOW』

【開催概要】
会期:2026年3月14日(土)~29日(日)
   12:00~19:00 ※月曜日・火曜日・水曜日休廊
場所:GalleryYukihira(アクセス

弊廊では、6年ぶり3回目となる藤川さきの個展「SCRATCH, AND KNOW」を開催いたします。
本展は、すべて陶板によって構成された新作展です。これまで油彩を中心に、人の意思や感情の揺らぎに通じる絵画表現を探求してきた藤川は、本展において支持体を陶へと移し替えました。陶板上に刻まれ、削られた痕跡は、かつてキャンバス上で力強く重ねられてきた筆跡の延長線上にありながら、土という物質の重量と焼成による不可逆性を伴って、より強い存在感をもって立ち現れます。傷や亀裂は単なる表層ではなく、制作の時間と身体の運動を内包した痕跡として作品に奥行きをもたらします。素材と表現の関係をあらためて問い直す本展における藤川の新たな試みを、ぜひご高覧ください。



分かり合おうとすることは、必ずしも優しい行為ではない。
分からないから、人は触れる。確かめようとして触り、その接触によって、相手を傷つけてしまうことがある。

私の0歳の次女は、保育園に通っている。まだ言葉を持たない子どもたちの間では、遊ぼうとした流れの中で、相手の顔に傷をつけてしまうことがしばしば起こる。それは相手を知ろうとしたこと、興味を持ったことの延長で起きた出来事だと思う。そこに悪意はなく、ただ分からないから触る、という行為があった。

私が粘土をこね、重ね、削り、ときに壊してしまう制作の過程は、この経験とよく似ている。人をわかろうとして触れ、傷つけ、あるいは傷つけられることで、それがどのような存在だったのかを初めて具体的に知る。傷は、理解に至るための痕跡として現れる。

粘土で形づくられた立体は、皮膚や肉のように、人間そのものの本来の形に近づこうとする。その形は強い熱の中で一度固定され、戻れない状態としてそこに残される。それは、人の消せない記憶にもよく似ている。

本展では、これらの行為を第一段階とし、さらに第二段階として、一度かたちを得たものにガラスや金といった異なる素材を重ね、ゆっくりと再び熱を与える。それは壊れてしまったものを元に戻すためでも、傷を消すためでもない。傷があった場所に別の光り方を与え、触れられた痕跡の上に、もう一度手を差し出すための行為としての実験である。

きらびやかさは、覆い隠すための装飾ではなく、傷を引き受けたまま、なお関係を結び直そうとするために重ねられる。本展示では、傷つけてしまうことと、その後に修繕し、装飾し、触れ直そうとすることを、断絶ではなく連続した行為として扱っている。触れてしまったこと、傷つけてしまったこと、そしてその後に重ねられた、もう一度関わろうとする手つき。そのすべてを含めて、ここに置いている。

藤川さき

【作家プロフィール】
藤川 さき (ふじかわ さき)

1990年 東京都生まれ
2013年 多摩美術大学絵画学科油画専攻 卒業
Instagram:https://www.instagram.com/fjkw/

身の回りの環境や対話から生まれた興味や疑問をもとに作品制作を行なう。
主に人の意思に通じた絵画表現を発表している。

【個展】
2012年「petit ”GEISAI”#15 審査員賞受賞者展 藤川さき個展」hidari zingaro、東京
2015年「日々と同期されるアート」d-labo ミッドタウン、東京
2015年「新世代への視点 2015 藤川さき展」ギャルリー東京ユマニテ、東京
2016年「いきるをかける」マサタカコンテンポラリー、東京
2016年「藤川さき個展」金魚空間、台北
2016年「壊れなきゃ生まれない」Art Complex Center、東京
2017年「王冠のプレゼント」絵本専門店青猫書房、東京
2017年「藤川さき の 準ガラクタ」Art Complex Center、東京
2017年「蟷螂の斧」ギャラリーondo、東京・大阪
2018年「未知のためのエスキース」ギャラリーondo、東京・大阪
2018年「未開の共存」Gallery Yukihira、東京
2019年「祈りの断層」ギャラリーondo、東京・大阪
2020年「痕跡への加筆」Gallery Yukihira、東京
2020年「無濾過の絵具」River Coffee&Gallery;、東京
2022年「全ての果実には種があったらしい」LIGHT HOUSE GALLERY、東京
2022年「息をするとは」KATSUYA SUSUKI GALLERY、東京
2022年 WhimsyWorks「光の積層」、台湾・台北
2024年 JPS gallery Paris「まな板から腹の底まで」
2024年 JPS gallery Japan「まな板から腹の底まで」

【受賞】
2011年「petit ”GEISAI”#15 審査員賞 ob賞」受賞
2014年「TAGBOAT ART FES 2014 審査員特別賞 杉田鐡男(GALLERY MoMo)賞」受賞
2014年「TAGBOAT ART FES 2014 審査員特別賞 森下泰輔(アートラボ・トーキョー)賞」受賞

【作家掲載情報】
「月刊美術12月号 今狙いたい!ネクストブレイク40人」
「月刊アートコレクターズ2月号 完売作家特集」
「ILLUSTRATION2023」
ARToVILLA(WEB)「作家のアイデンティティ」

【参考作品】

左「穏やかな修繕」15cm×23cm×2cm / Ceramic, glass / 2026
中「出会う」19.5cm×26cm×2cm / Ceramic, glass / 2026
右「記憶の装飾」25cm×21cm×2cm / Ceramic, glass / 2026

お問い合わせ先
Mail:info@yukihira.net(代表・福嶋幸平)