佐竹龍蔵『東京』
弊廊では、佐竹龍蔵の個展「東京」を開催いたします。本展では、都市を流れる旧中川を通じて、歴史と人々の営みの痕跡を辿ります。
旧中川は、かつて一本の川だった中川が荒川放水路の開削によって分断され、現在の姿となりました。佐竹はその成り立ちや変遷を調べ、実際に現地を歩きながら、川辺の風景やそこで暮らす人々の営みを肌で感じ取り、作品を制作しました。
時を経て役割を与え直され、変化し続けてきた旧中川。佐竹が描く風景には、そこに息づく人々の痕跡と、時の流れに沿って変わりゆく風景が描かれています。
ぜひ、佐竹の作品を通じて、移りゆく東京という都市の中に息づく歴史を感じていただければと思います。
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東京の地図を眺めていると不思議な形の川があることに気がついた。旧中川という川で落書きみたいなふにゃふにゃした形が目を引く。はじめは荒川から水を引いている水路だと思ったが、よく見ると荒川を挟んだ対岸には中川が流れている。旧中川はその名前と形から、荒川によって分断された中川の切れ端部分だということがわかる。
調べてみると、荒川の岩渕から下流の部分は荒川放水路といって、明治44年から昭和5年にわたって整備された人工の川だということがわかった。放水路がつくられる前の荒川は現在の隅田川が本流だったので中川と交わることはなかったが、荒川放水路の完成によって中川が分断され、昭和40年には荒川放水路が荒川の本流と定められた。まさに地図を書き換えるような大規模な工事が長い年月をかけて行われ、その痕跡が旧中川という不思議な形をした川の正体だった。
実際に旧中川を訪れてみると綺麗に整備された穏やかな水辺で、たくさんの水鳥がいて散歩をしている人たちの姿があった。東京の市街地を流れる川は味気ないと思い込んでいたが、歴史を知ると人と川との関わりが見えてくる。夕闇に包まれる旧中川の河川敷を歩きながら、東京の水辺を描きたいと思った。
佐竹龍蔵
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【開催概要】
会期:2025年3月22日(土)~4月6日(日)
12:00~19:00 ※月曜日・火曜日・水曜日休廊
場所:GalleryYukihira(アクセス)
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【作家プロフィール】
佐竹龍蔵
1987年 高知県生まれ。2012年 京都造形芸術大学大学院 芸術研究科 芸術表現専攻 修了。奈良県在住。人の暮らしの跡形、戦争や災害の痕跡、昔話や怪談など、時間をかけて現在まで残されてきたものに魅力を感じる。故郷や旅先で出会ったものを、土地や人々の記憶のかけらを集めるように描きたい。
主な展覧会
2024年 個展「旅のあとかた」(新宿高島屋美術画廊/大阪高島屋ギャラリーNEXT)
2024年 個展「水辺を歩く/人間の森」(YOD Gallery、大阪)
2024年 「第9回東山魁夷記念日経日本画大賞」(上野の森美術館、東京)
2023年 「ANONYMAT vol.4『under / over MASK』」(Gallery OUT of PLACE、奈良)
2022年 「京都日本画新展 2022」(美術館「えき」KYOTO)
2021年 個展「2020年の亡霊、溝を埋めろ。」(MEDIA SHOP|gallery 1、京都)
2017年 個展「北山の河童は鹿の角がこわい」(ギャルリ・オーブ、京都)
など
ウェブサイト|https://stkrz62.com
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参考作品
左:「東京スカイツリー」 410×318mm/2025年/木製パネル、高知麻紙、岩絵具、顔料、膠
中:「水門」 410×318mm/2025年/木製パネル、高知麻紙、岩絵具、顔料、膠
右:「海に浮かぶ庭」 410×318mm/2025年/木製パネル、高知麻紙、岩絵具、顔料、膠
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お問い合わせ先
Mail:info@yukihira.net(代表・福嶋幸平)