飯塚純 個展 『Doughnut Holes』

 

飯塚純 個展 『Doughnut Holes』

ドーナツの穴は不思議な存在だ。ドーナツを食べれば、当然ながら穴も失われる。しかし、失われるのではなく、そもそも「ない」のだ。しかし、「ある」のである。「ない」が「ある」・・・「ない」が「あった」のだ。

私はある一冊の書籍に出会った。学際研究の書籍『失われたドーナツの穴を求めて』(さいはて社.2017年)である。 その書籍はドーナツの「穴」をテーマに、様々な専門領域の学者たちの言葉が編み込まれた知的探究心を駆り立てるものであった。それからというもの、美術家の立場でドーナツの穴に関する言葉と視点を探すべく、ドーナトロジー(ドーナツ学)に現を抜かしていた。

「ドーナツの穴は被写体になるのか?」

その問いに対する答えを考えていたある日、私は近所のドーナツショップでドーナツを食べていた。 ドーナツを買うと、グラシン紙とペーパーナプキンが渡され、私はその上にドーナツを置きながら食事をする。 食べ終えた頃、そのグラシン紙やペーパーナプキンに目をやると、うっすらと油分や食べカスが痕跡として残されていた。眺めていると、そこに「失われたドーナツの穴」を感じ、不思議な気持ちになった。

ロラン・バルトのいう写真の本質・ノエマ、「それはかつてあった」である。

私はこのドーナツの穴を感じた原体験のような感覚から写真性を見出し、それらを模倣することでその本質をとらえるために制作を行なった。本作は、ドーナトロジーへ送る私からの光の通信である。

飯塚純

【開催概要】
会期:2021年8月19日(木)~22日(日)、26日(木)~29日(日)
   12:00-19:00 ※2021年8月より月曜日・火曜日・水曜日休廊
場所:GalleryYukihira(アクセス

※お越しになる際は必ず【ご案内】をご覧ください。
※新型コロナウイルス感染症の影響により日程変更の可能性がございます。最新情報はTwitter(@GalleryYukihira)にてご確認ください。

■作品販売について
8月19日(木)12:00~オンラインショップをオープンいたします。
URL:https://art-view.wixsite.com/home
※会期中は会場でも直接ご購入いただけます。

【作家プロフィール】

飯塚 純 Jun Iizuka
美術家。1987年新潟県生まれ。 主な展示として、「An Awakening Photography / 東京芸術劇場 galleryII(2019)」、「新章風景#2-現代における風景写真の在り方-/東京都美術館」や「REPHOTOGRAPH/BOOKS f3(2017)」、「新章風景-現代における風景写真の在り方-/ターナーギャラリー(2015年)」などがある。主な出版物として、「THE LAST DRIVE」「STARDUST」「REPHOTOGRAPH」(全てDOOKS出版)など他多数。2018年には、Tai Kwun( 香港 )アーティストライブラリーにて「REPHOTOGRAPH JUL.2016」、「FOREST MEMORY GAME」が収蔵。
Web:https://www.juniizuka.net/

お問い合わせ先
Mail:info@yukihira.net(代表・福嶋幸平)